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メイ.サートン著 武田尚子訳『一日一日が旅だから』みすず書房.2001年 この小さな詞花集は、五百編をはるかに超えるメイの詩作のごく一端をうかがわせるに過ぎない……しかし日本の読者の大きな共感を得た、自然に対して繊細な感応をみせるメイ。情熱を傾けつくして恋に生き、恋に酔い、やがて失恋の痛みから立ち上がっては、それを詩に変えてしまう不適な魔術師。恋するほどに母を愛したメイの喪失の悲しみ。父の死ではじめて両親から解放され、大人の女になったというメイの、自らの出発への祝賀文にも似た父への弔辞。老年という新しい挑戦にとまどい、寂寥と至福のはざまをゆれながらも、不死鳥であり続けようとしたメイ。断片的ではあるが、生涯のさまざまな時期における詩人サートンの心の歌を、この詩集はお贈りする。みずみずしい叙情と、流砂に足をとられそうな絶望の中からも立ち上がるサートンのスピリットは、この詩集を一貫して流れる通低音だ。小説家であり、回想記やジャーナルの作家でもあったメイ.サートンは、自分は何よりも詩人だと定義していた。本書は読者を、さらに深く広いサートンの世界への旅にみちびくことだろう。